適材適所
人を育てることは、まずその人の適性を見抜かなければならない。適性を把握したら、それを発揮できる場所を与え、能力に磨きをかける。これが、人材育成の流れである。
ホームランバッターならともかく、年に数本しか打たない選手にとってホームランは麻薬。ゆっくりベースを一周する快感に味をしめて一発狙いの雑なスイングになりがちで、打撃を崩してしまうことが多い。己を知り、謙虚な姿勢を忘れてはいけない。
「外野手出身で名将、知将と呼ばれた監督を聞いたことがない」。監督というのは、現役時代の経験がベースになる。野球の大事なことは全部内野でやっていて、外野手は考えることがほとんどないのが理由という。プロ入りからずっと外野手で日本一の監督になっ…
プロ野球も、一般企業も同じ。ちょっとワルで、クセのある方が、リーダーシップを発揮するにはいい。マジメはコーチ向き。リーダーには、人望、信頼、度量、貫禄、威厳などといった人的要素や、的確な表現力も必要となる。雰囲気やオーラのようなものも必要…
南海でのプレーイング・マネージャー時代、キャンプでの全体ミーティングで、選手のスリッパの脱ぎ方をポジション別に観察したときのこと。「いかにもキャッチャーらしいな」と野村は思った。ピッチャーをリードしながら配球を考えなくてはいけないキャッチ…
130キロ台のボールしか投げられないのであれば、どうすればその球速で相手打者を打ち取れるか、「思考」の限界まで考え抜くことが大事。そして130キロ台で勝負できるピッチャーへと、「勇気」を持って今の自分を変えていけばいいのだ。
選手の隠れた才能や長所を見抜き、引き出し、活かす方法を見つけるのは、指導者の責任であり、使命。
誰かの犠牲によって勝利をおさめたとき、それを正当に評価してやることが非常に大切。
フォア・ザ・チームとは、「チームのために自分はどのように役立てばいいのか」を常に念頭に置き、実践すること。それができる人間が多ければ多いほど、組織は強くなる。
努力は大切。だが、がむしゃらな努力は見当違い。「優れた才能を持ちながら使い方を間違えたり、自分が向いているのは別の方面なのに、方向違いの努力をしている選手もいる」と警鐘を鳴らす。まずは自分を知ること。向き・不向きなど、自分に対する“適材適所…
3、4年に一人、「リーダーの器みたいなものを持っている選手に出会うが、無名の控え選手だったりする」。必ずしも役職に就いている者が優秀なリーダーであるわけではない。
「何がしたいか」ではなく、「何が向いているのか」という視点は重要。
南海ベンチを盛り上げた大塚徹について。大塚はベンチで常に明るく、「ヤジらせたら天下一品」と評された。南海が大塚を解雇しようとしたとき、野村は「やめてくれ、役に立っている。立派に試合に参加しているんや」と反対。解雇を撤回させた。
個々に役割がある。全員が四番ではダメ。「野球はドラマ。脇役がいて、主役が活きる」。
野球でもビジネスでも、「組織」の構成メンバーには必ず役割がある。その人の個性と能力に応じて役割を与える、あてはめることが「適材適所」。
「適材適所」は、リーダーにも求められる。
子供の教育にも通じる考え。野村は中途半端を嫌悪する。
「飯田からミットを取り上げたんや。キャッチャーより外野の方が向いとった。適材適所や。キャッチャーのままだったら、こんなに活躍しとらんやろ」飯田哲也は1986年ドラフト4位でヤクルト入団。当時は捕手だったが、野村が監督に就任すると、足が速い飯田は…