頭脳に限界なし
世の中もずいぶんと幼稚な世界になってしまった。政治のこと、経済のこと、日々起こる犯罪など……。野村は、野球とは、仕事とは、人生とは、と自問自答していくことで考えが深まる「とは理論」を説いてきた。考えることを放棄していては、この「幼稚さ」の渦…
打者が三振したとする。そこで「なぜ、三振したのか」で終わってはいけない。「なぜ、打てなかったのか」まで考えるのだ。裏側まで検討しなければ、今後の対策としては十分とは言えない。
どんな仕事をしていても、必ずどこかで壁にぶち当たる。そのときに、「この壁は、どうして自分の目の前に立ちはだかっているのか」「原因はどこにあるのか」と疑問を持つ。その問題意識こそが、成長につながる。
いまは教えたがる人間が無数にいる。そういった人間に手取り足取り指導されると、選手は「考える力」をなくしかねない。大切なのは、質問を投げかけ、選手の頭のなかで思考をめぐらせるように仕向けること。
情報化社会のいま、手元にスマートフォンやパソコンがあれば、必要な情報はいくらでも手に入る。しかし、集めた情報に対して、感じて動くことをしなければ、勝負には勝てない。
野村は、何事も理にかなっているかどうかを根本的に考えている。「理」とは知識と知恵、考え方である。投球にしても、打撃にしても同じ。戦術も試合運びも理がなければいけない。技術だけで勝つことはできない。
1球投げて休憩、1球投げて休憩……。こんな間合いの長いスポーツは野球ぐらいだろう。次のプレーに対して備え、考える時間を与えられている。相手が何を仕掛けてくるか考える。徹底的に相手の嫌がることをする。野球は間違いなく、頭のスポーツ。頭脳戦だ。
失敗ほど人を成長させるものはない。どうして失敗したのか、何がいけなかったのか。欠点や弱点を克服するために、頭を使い、知恵を振り絞り、創意工夫する。その試行錯誤の過程で、人は成長するのである。
コントロールに不安がある投手なら、「最低5球続けてコースに投げられるまでは練習をやめない」というように、自分なりの課題を課しながら練習を行うべきなのに、たいがいの選手はそこに気がついていない。何の工夫もせず、ノルマをこなすかのように漠然と投…
「気合だ!」「気合が足らん」現役時代、そう叱咤されるたびに、野村は釈然としない気持ちになった。「プロとして、そんなレベルの低いことでいいのか」と。気力や体力などというものは、プロとして持っていて当然。それを強調しなければならないようでは、…
たとえ人から教えられても、自分自身が考えなければ、それ以上の進歩はない。まずは自分の頭で悩み、考え抜かなくては、何事も身につかない。指導者は、効率よく教えてやるのではなく、自分で問いを設定できる力をつけてやることが、何よりも大切。
感謝の気持ちがあってはじめて、人には感じる力が養われる。感じる力が備わってくると、考える力も並行して鍛えられる。感じる力と考える力は一体のものなのだと、野村は考えている。
プロ入り4年目でホームラン王を獲得。「なんとかプロでやっていけそうだ」と思った矢先、まったく打てなくなった。相手バッテリーから研究されるようになったのだ。技術的限界を感じた野村は、データの活用に活路を見出し(当時の野球界には“データ”という言…
失敗し、負けたからこそ、「自分のやり方はおかしいのではないか」と疑問を抱き、正そうと考える。頭を使い、考えることは、敗者ならではの“特権”。
これは個人だけでなく、組織に対しても言えること。
「見る」とは、目の前にあることを捉えること。「観る」とは、相手の心の動きを察すること。相手や状況を「観る」ことで、深みのある思考が可能になる、
あらゆることを与えられてきた現代の若者に、いきなり「問題意識を持て」と言っても難しい。意識を変えるには、「本質を見つめ直させる」こと。
それにより、今、何をすればいいのかが見えてくる。「目的と現実の間を埋めるには、努力に加えて、知恵をつけること」。
打者の嫌がる外角低めに決めるには? 同じフォームであらゆる球を投げるには? 同じ球種で効果的な緩急をつけるには? テーマはいくらでも出てくる。これらをひとつひとつ解決していくことで、その人は段階的に成長していく。
自分の持ち味を発揮するために大切なこと。自分の持ち味は何なのか、自分は何ができるのか、自分の長所を誰にも負けない武器にするには何をすればいいのか、何をすべきなのか、徹底的に考え、磨いていく。その中から自分を活かす道が拓けてくる。
なぜ、うまくいかなかったのか。何がいけなかったのか。どうすればうまくいくのか。そのためには何をすればいいのか。
「なぜ」と問うからこそ、考え、創意工夫し、試行錯誤する。「なぜ」という疑問を常に抱き、理由を考え、修正することで、もうひとつ上のレベルに上がることができる。
人間は、失敗してはじめて自分の間違いやいたらなさに気づく。そして「どうして失敗したのか」「何がいけなかったのか」と反省し、「どうすればうまくいくのか」「何をすればいいのか」を真剣に考える。この過程で人間は成長するのである。
女性を口説くためには、ただやみくもに迫ればいいというものではない。相手の性格や嗜好などさまざまな情報を集め、どうすればこちらを振り向いてくれるか、それなりの作戦を立てる必要がある。相手の反応や態度から心理を読み、効果的な方法でアプローチし…
投げる・打つ・走るという目に見える「有形の力」には限界がある。しかし、観察力、洞察力、判断力、決断力、記憶力。データを収集・分析して活用する力。さらに深い思考と確固たる哲学……これら目に見えない「無形の力」は無限である。磨けば磨くほど、鋭く…
一流のバッターは、ピッチャーのフォームにわずかに現れるクセを見逃さない。一流のキャッチャーは、バッターのスタンスやボールの見逃し方などから、考えていることを見抜く。一流の野手は、キャッチャーの出すサインを見て、打球の飛んでくる方向を予測し…
一流と二流を分けるもの。それは才能の多寡ではなく、伸び悩んだり、限界に突き当たったりしたときに、どういう態度をとるかだ。
たとえ凡人であっても、頭を使い、徹底的に考えれば天才と十分に戦える。
世の中に天才は一握り。ほとんどの人は凡人である。が、とかく天才というものは考えなくてもできるから、頭を使うことが少ない。そこに凡人が天才に勝るチャンスがある。
つまり頭と口。頭脳と言葉である。むさぼるように本を読んだ。人前で話すことは苦手だったが、必死で挑んだ。