野村克也 名言集

仕事に挫折したとき、組織に悩んだとき、人生に苦しんだとき… 野村克也の言葉があるじゃないか。ノムさんの人生哲学が凝縮された名言集。

生涯一捕手

キャリアは嘘をつかない

いまでも野村は、見抜く力、読み取る力にかけては、大方の現役選手に負けない自信がある。プロ野球の世界で全神経を集中して、何十年もクセを見抜く訓練を続けてきたのだから、そこらの選手とは見えるものがちがうのだ。キャリアは嘘をつかない。そこには、…

ボヤキは永遠なり

現役時代はささやき戦術から「ささやきの野村」と呼ばれていた。ところがヤクルト監督の頃から「ボヤキの野村」になり、楽天の監督退任直後に「ボヤキ」が新語・流行語大賞のトップテンに選ばれた。今やボヤキ=野村が定着してしまった。勝ってボヤキ、負け…

とは理論。野球とは、監督とは、捕手とは……。答えていくことで考えが深まる

野村は近年、「とは理論」を提唱している。打撃とは、投手とは、仕事とは、人生とは……。何でもいい。「とは精神」を持ち、自問自答していくことで、考えが深まる。

野球は3の倍数でできている

野球は面白いことに、3の倍数で成り立っている。3ストライクで三振。3アウトでチェンジ。ポジションは9つで試合は9イニング。6チームずつの12球団で、カードも3連戦が多い。

人間は楽をしたいから攻撃的なチームを作りたがるが、野球は0点に抑えれば絶対負けない

人間は楽をしたいから、たくさん点を取りたい。野手出身の監督は特にそういう発想で、攻撃的なチームを作りたがる。だが、野球は0点に抑えれば絶対に負けない。野村は1対0で勝つことを理想に、チームづくりをしていた。まずは投手を含めた守りを固めるのが、…

ポジションは与えられるものではなく、奪い取るものである

南海のプロテストを受けた理由は、レギュラー捕手がベテランで20代が少なく、何年か経てば試合に出られるチャンスがあるチームを探したからだった。バッティングがよかった野村はプロ入り2年目で捕手から一塁手にコンバートされたが、その後なんとか捕手に戻…

ピッチングは、外角と内角、高めと低め、緩と急、ストライクとボールという、4つのペアによる相対関係で成り立っている

これをどう操るかによって、ピッチングに幅が生まれ、それだけバッターを打ち取る確率を上げることができる。

キャッチャーとして自分の能力を高めたいなら、投手陣が弱いチームを選ぶことが大切になる

ピッチャーが好投手であるために、創意工夫をしなくても勝てるのならキャッチャーとしてこれほど楽なことはないが、楽をすれば進歩もなくなる。反対に、弱小投手陣でマスクをかぶるのは苦労が絶えないが、その苦労が人を進歩させるのだ。

散らかったスリッパをきちんと揃え直した上で空きスペースを作り、きれいに自分のスリッパを置いたのは、キャッチャーのポジションを守る選手だった

南海でのプレーイング・マネージャー時代、キャンプでの全体ミーティングで、選手のスリッパの脱ぎ方をポジション別に観察したときのこと。「いかにもキャッチャーらしいな」と野村は思った。ピッチャーをリードしながら配球を考えなくてはいけないキャッチ…

「キャッチャーは監督と似ている」と思っていることがある。それは、人の力を使って自分の理想を実現しなくてはいけないという点だ

監督は選手を采配し、キャッチャーはピッチャーをリードする。だが、自分の意図どおりに動いてくれるとは限らない。ままならないことが多い中で、キャッチャーはピッチャーや他の選手をうまくリードしながら守り抜かなければならない。だから、監督を務める…

配球は、一球一球、根拠が必要だ

ヤクルト監督時代、正捕手に抜擢した古田敦也に伝えた言葉。「徹底的に配球を勉強しろ。オレのそばから離れるな」。

野村−野球=0

野球という仕事が好きだから、24時間野球のことだけを考えていられる。好きなものだから、不愉快な経験や失敗に耐えて、乗り越えていこうという力を持つことができる。自分の仕事を好きだと言い続けられているうちは、人間はいくら年をとっても生涯現役でい…

背番号はなくなるが、職場がグラウンドからネット裏に変わっただけだ。人間としての現役を退くわけではない

現役を引退してユニホームを脱いだときに思ったこと。野村の人生は、「生涯一捕手」という言葉に集約されている。

打者の動きを見ろ。反応を見ろ。見えなければ感じろ

捕手にとって必要なのは観察力、洞察力である。

野球理念や理論だけは誰にも負けないという自負がある

プロ野球界に入って50数年、プロ野球について考えてきた“誇り”が自分を支えている。

王は私のささやき戦術をちゃんと聞いて、会話もしてくれるが、すぐに集中力を高めて打席に挑んだ。長嶋は何をささやいても見当違いの反応が返ってくる。さっぱり心が読めなかった

現役時代、野村の“ささやき戦術”は有名だった。バッターボックスに入ってきた打者に、高級クラブで仕入れたその打者の私生活などの情報をささやき、集中力を乱した(耳栓をして打席に入る打者もいたという)。ささやき、ボヤキ、情報戦略の基本は、人間心理…

古田がブルペンで若い投手に向かって「ストライクさえ投げれば、オレが何とかする」と言ったらしいな。ワシもその台詞を言った覚えがあるよ

「責任はオレが取る」。そう断言してくれるからこそ、投手は思い切り自分を出し切ることができる。投手と捕手の人間関係は、そのまま上司と部下、夫と妻にも当てはまる。「古田も一人前になったな、と思った。この言葉が出てくるのは、自信の表れ」。

自分がこれだけ苦しんでいるのだから、きっと相手のキャッチャーも同じに違いない

捕手として、味方投手に何を投げさせようか苦心していた日々、「敵投手の持ち球を、敵の捕手はどう使いこなしているのか、いかなる意図でサインを出しているのか、知ることで優位に立てる」と気づいた。ライバルの立場になることで、思わぬヒントが隠されて…

カウント3-2の場面で、ボール球を投げさせて勝負する。それが配球の妙

「3-2というカウントは面白い。打者は2-2まではボール球を打たないように気をつけるのに、3-2になるとストライクが来ると思い込む。選球眼のタガが緩む。ボールの誘い球につい乗ってしまう」。「ただし、打者の選球眼の分析をしっかりしておくこと」。

ボール球の必要性を認識しろ

全力投球で真っ向勝負することだけがプロの勝負ではない。「全知全能を使ってこそ、プロの戦い。ボール球の効用を理解してこそ、名バッテリーと言える」。

“記憶”から始まり、打者“分析”をして試合に臨み、”観察”や“洞察力”を通して、“判断”したあとに、“決断”する

捕手の条件。セオリーどおりではダメ。ときには奇策を交えないといけない。

捕手は「疑い屋」であれ

相手打者が「いい球を見逃す」「いいバッティングをする」「誘い球に手を出してこない」。捕手はそこで「なぜ?」と考える。「一球一球が、なぜ?なぜ?の連続である。捕手は細かい情報が欲しいのだ」。

捕手というのは裏街道の好きな人種。人の裏をかいてよい結果を出すことに快感を覚える

配球には、捕手の特徴、性格がよく反映されるという。

大舞台が選手を育ててくれる。逆に言えば、大きな舞台を経験しないと、飛躍はない

「特に日本シリーズの舞台が、一番キャッチャーを成長させる。最低4試合以上あるし、同じ相手と戦うから、キャッチャーは(データ分析などが)大変。記憶、推理、判断が求められる」。

本当は新庄にキャッチャーをさせたかったんや

「身体能力に優れた新庄に、配球とは何か、相手がどんなリードをしてくるのかを体験の中で知って欲しかった。新庄は考える習慣に欠けていたから。でも、キャッチャーをやらせると嫌がると思ったから、ピッチャーをやらせたんだよ」。

投手は、「打てるもんなら打ってみろ、絶対抑えてやる」というプラス思考がいい。捕手は危機管理のマイナス思考。プラスとマイナスだから、バッテリーと言われるのだ

打者に向かっていく闘争心がないと、投手は大成できない。捕手は、目配り、気配り、思いやりと危機管理のマイナス思考。

アンパイアは、ピッチャーの女房役のキャッチャーにとって、言ってみれば夫の上司みたいなもの

「あそこの奥さんは感じがいい」と思わせるのがキャッチャー=女房の当然のつとめ。

キャッチャーは9人の中で唯一、反対方向を向いている

捕手は、チームで唯一、他の選手と逆方向を向いている。しかも一人だけ座っている。異なる視点と視野で、戦局を見つめているのだ。「捕手は守りにおける監督の分身」。

キャッチャーは「捕手」と書く。言うまでもなく球を捕る「捕」だが、私はもうひとつ、投手を助け、足りないところを補う「補」であると思っている

投手を支え、監督の意図を読み取り、試合中に欠けたり忘れたりしそうなことを、補ってくれる存在。

捕手でボヤかないヤツは信用しない。ボヤキだして一人前

捕手は頭の中で完全試合を描く。だが現実はそうはいかない。理想と現実のギャップを埋めるボヤキこそ、捕手の必須条件。