不器用は器用に勝る
職場や学校で天才的な才能を発揮する人など、ごく一握り。天性や天分に恵まれていないことを嘆いたところで、どうにもならない。そこからどうするかが、人間としての問題。
たいした苦労もせずに階段をぴょんぴょんと駆け上がることができるウサギとは違い、カメは階段を一段一段上がるごとに苦労に直面する。この苦労を苦労で終わらせずに自分を高めるチャンスに変えることができたとき、カメがウサギに追いつき追い抜く可能性が…
ほとんどの人が不器用である。野村は自分が不器用な人間であることを認識し、それに徹した。そして、たどり着いたのが頭を使い、データを活用する道。その野球はやがて「ID野球」と呼ばれ、今ではどの球団でも取り入れるようになった。
凡人が人より抜きん出ていくためには、小事を大切にし、それを積み重ね、一歩一歩大事に近づいていくしかない。小事が大事を生む。
短い勝負であれば器用な人間が勝つかもしれないが、長期戦になれば必ず不器用が勝つ。
器用な人間は何事もそれなりにこなすことができるので、周囲から重宝され評価もされる。しかし「器用貧乏」という言葉があるように、「これだけは負けない」という自分の武器を持てずに終わることが少なくない。対して不器用な人間は、要領が悪く、何度も失…
テスト生だった野村が三冠王を獲るまで成功した理由。相手投手や捕手の配球を分析したり、16ミリカメラを使ってクセを発見したりしてデータ化した。ノート数十冊分にもなった。当時は“データ分析”という言葉はなく、“傾向”と呼んでいた。
便利なものに頼りすぎる者は弱い。不便なものは使えない。器用に何でもこなす者も、いざというピンチで対応できないことがある。不器用な人間は、それを克服する努力を積み重ねたとき、底力を発揮する。
「自分は不器用だから、人が100回素振りをすれば、200回、300回やらなければならない、と言い聞かせてやってきた。それだけに不器用な人間の苦労もわかるつもりだし、逆に器用に生きようとする人たちの弱さも見てきた」。