一流の条件
それが、その人の人間力を決定づける。
「人気とはなにか?」野村は交流のあった上方の喜劇役者・藤山寛美の言葉を思い起こす。「兄貴、“人気”ってどう書きます? “人の気”と書くでしょう。人の気をつかむ、人の気を動かすのは大変なことですよ。“自分の気”と書いて人気と読むなら、それは簡単なこ…
優れた人物は他人と協力し合うが、むやみに群れることをしない。つまらない人物ほど簡単に同調するが、真に他人と理解し合うことがない。
一流になる人間の特徴のひとつに、どんなことでも「あの人ができるなら自分もできる」と、無意識に自分にプラスの暗示をかけているという点がある。逆に、二流で終わる人間は、「自分はこれくらいできればいい」と自分の能力を限定してしまう。
人はイメージできるものにしかなることができない。「メジャーリーガー」というイメージを持つことができない人は、未来永劫メジャーリーガーにはなれないのだ。
これが組織の本質である。そのことを理解し、自らを高め続ける者だけが、一流の域にたどり着ける。
野村の現役時代のライバル“神様”稲尾和久。稲尾の球を受けるときは、構えたミットを動かす必要はなかった。アンパイアにも「稲尾はコントロールがいい」という先入観があり、なおかつボールにキレと伸びがあるから、少々コースを外れても「ストライク」とコ…
それは歴代の名選手を見ればよくわかる。一流選手の共通点として、「よく働き、よく遊ぶ」というのがあった。よく言えば個性的、要するにくせ者、問題児、変わり者がほとんどだ。長嶋茂雄しかり、張本勲しかり、金田正一しかり。人格者として知られている王…
闘争心と教養は、お互いを補完し合う関係にある。
職場や学校で天才的な才能を発揮する人など、ごく一握り。天性や天分に恵まれていないことを嘆いたところで、どうにもならない。そこからどうするかが、人間としての問題。
「大欲は無欲に似たり」という言葉の解釈。もうひとつの解釈は、欲が深すぎる人は、それに惑わされて損をすることになり、無欲と同じような結果に終わるというもの。
現役時代、シーズン後の日米野球のこと。本来はオフの時期だが、王と長嶋はほぼフル出場した。野村が長嶋に同情すると長嶋はこう答えた。「休もうと思ってないし、休むわけにもいかないんだよ。ノムさん、お客さんはオレたちを見に来てくれているんだ。だか…
野村が王貞治の生き方を見ていて思うこと。誰よりも厳しい練習に耐えてきた王は、自分がやってきたことを決して「苦労した」「努力した」などと口にしない。厳しい練習に取り組むことは、王にとって当たり前のことだったからである。
24時間、仕事のことばかり考えていられる意志の強い人間にのみ、本物の技術やスキルは身につく。
自分が笑うために一生懸命やるのはアマチュア。プロは、人に喜んでもらう、笑ってもらうために努力する。
「おい、野村。素振りをやって一流になるんなら、みんな一流になってるよ」。ブルペンキャッチャーの役割しか与えられず、試合にも出られなかった二軍時代。先輩からの飲みの誘いを毎晩のように断り、とにかく素振りをしていた。ある日、二軍監督が選手たち…
仕事と遊びは、対等な関係でなければならない。豪快に遊べる人は、豪快に働ける。
荒川博のもとで素振りする王貞治を目の当たりにして。ぶら下げた紙を真剣で切る練習をしていた。「すさまじい殺気が漂っていた」。
風格はその人の内面から生まれる。これがあることで、周囲の人々の気持ちを捉えて動かすことができる。同じことを話しても、風格がある人が語るのと、ない人が語るのでは、その説得力はまったく変わってくる。
若手時代、野村のバッティングの長所は「ストレートに強いこと」、短所は「カーブが打てないこと」だった。相手ピッチャーは重要な局面でカーブを投げてくる。野村はカーブを意識するあまりストレートも打てなくなり、長所が弱まってしまった。短所を放置し…
皓歯とは、白い歯のこと。「何をするにしても、少なくとも三年間は白い歯を見せることなく、歯を食いしばって、無我夢中で取り組みなさい」という意味。
一流選手はみな、小事に気づく感性に優れている。これには例外がない。
仮にもプロのピッチャーが簡単に打てるボールを投げてくるわけがない。どんな一流バッターでも10回のうち7回は失敗する。しかし、どんなにいいピッチャーでも失投はある。その失投を確実にモノにするために必要なのが、入念にして周到な“準備”。一流と二流の…
ヤクルト監督時代、優勝を決めたあと、消化試合でBクラスのチームと対戦した。そのチームの選手は野村の顔を見ても「こんにちは」と言うだけだった。そのあと巨人の選手と会うと、皆が口々に「おめでとうございます」と言ってくれた。「さすがは巨人だな……」…
楽天時代の田中将大に対して。田中が将来、日本を代表するピッチャーになるためには、人間形成が必要不可欠であり、そのためには二十代前半の過ごし方が最も大事だと野村は考えていた。2014年1月22日、田中は米大リーグ・ヤンキースと7年総額1億5500万ドル(…
「技術を伸ばしたい」者に野村がいう言葉。選手として一流である前に、人間として一流であらねばならない。
「一本でも多くヒットを打ちたい」「一勝でも多く勝ちたい」と考えるのは正しい。しかし、それが「自分の成績を伸ばすことでチームに貢献する」と変換されてしまってはいけないのだ。「チームのために成績を伸ばす」とならなければいけない。前者は「チーム…
「ケガをしていても、言わなければケガではない」。元阪神の金本知憲は言っていた。野村も現役時代はケガをおして試合に出続けた。また、金本は「ケガと故障は違う。ケガはデッドボールのような不可抗力で負うもの。故障は自分の準備が足りないで負うもの」…
ヤクルト監督時代、エラーをした選手がベンチに戻ってくると「ドンマイ、気にするな」という声がかかった。それを聞いた野村は烈火のごとく怒った。プロならば失敗を「恥ずかしい」と思わなければならない。失敗を恐れてはいけないが、それを恥と思わなけれ…
自分の感情をコントロールできるか否かは、一流と二流の分かれ目のひとつ。