人間は人の評価で生きている
個人の数字も大事だが、自らが所属するチームに貢献することがもっともっと大事だ。このことを理解し実行する人間が組織のなかに多ければ多いほど、より強固なチームへと成長していく。
それが、その人の人間力を決定づける。
才能があっても人徳が備わっていなければ、家に主人がおらず、使用人が好き勝手に動いているようなものだ。
かつてに比べ現代社会においては、どうも口が達者で、如才なく立ち回れる人間が得をする傾向にある。才気煥発であることがもてはやされて、人物の器さえないがしろにされてしまっているのだ。うまい話には裏があるように、調子のいいことばかり言う連中には…
楽天の監督をクビになったとき、球団から「監督ももう74歳ですからねぇ」と肩たたきされた。74歳でも野球に関しては誰にも負けない自負があったが、40代の球団幹部には理解されなかった。日本に「年寄り引っ込め」という風潮があるのは困ったものだ、と野村…
「汝自身を知れ」。この有名な言葉は、古代ギリシャのデルフォイの丘に建つ、アポロン神殿の入口の柱に刻まれた格言のひとつだという。このような神聖な場所に、そんな言葉が刻まれているということは、それだけ人間にとって、おのれ自身を知ることがいかに…
現役引退後、評論家としての初めての講演会。前日に内容を3枚のメモにしたためて本番に臨んだが、持ち時間の3分の1で話が尽きてしまった。もともと人前で話すことに苦手意識を持っていた野村は茫然自失となり、スケジュール調整をしてくれていた妻・沙知代さ…
よく選手に聞いた言葉。だが、その答えをすでに知っていた選手は少ない。短いプロ野球人生を生きる以上、それを考えなければいけない。プロ野球選手も客商売。その意識がなければ、自分を磨くことはできない。
風格はその人の内面から生まれる。これがあることで、周囲の人々の気持ちを捉えて動かすことができる。同じことを話しても、風格がある人が語るのと、ない人が語るのでは、その説得力はまったく変わってくる。
ケチの人は、人徳を得られない。いくら卓越した知識、理論、技術を持っていたとしても、周りの人間はついてはいかない。人間性や人望などを含めたトータルな人間としての魅力が、リーダーには必要不可欠。
だから、バイアスがかかっていて適正とは言い難い。その人間の価値、評価は、自分ではなく、他人が決める。他人が下した評価こそが正しいのだ。
それまでと同じことをしていては、周囲は満足してくれない。いきおい、周囲は厳しく接するようになる。
「なんとかして自分を見てもらいたい、認められたい」と願い、「そのためにはどうすればいいのか」と考えるところから、人の成長は始まる。
野球選手と言えども、一般社会の中で認められるようになることが大切。一般社会で認められれば、その後の人生に困ることはない。そのためには、何よりもまずしっかりとした人生観を確立しなければならない。
「人が自分を見ている」という意識があるかどうか。日々をそういう姿勢で送っていれば、自然と経験やノウハウなどが蓄積され、それらを必要とし、活かす場が必ず与えられる。
世のため人のためにならない特性は、本人がどう思っていようと、何の価値もないばかりではなく、周囲は迷惑としか感じていない。
それが人間形成につながり、人からも高い評価をされるようになり、愛され、人間関係を円滑にしてくれる。
礼儀が身についていない人間は社会で相手にされない。逆に言えば、礼儀さえきちんとわきまえていれば、社会に出ても最低限困ることはない。憲法を知らなくても生きていけるけれど、礼儀を知らなければ生きていくのは難しい。
70歳で楽天監督の要請があったときに考えたこと。
3、4年に一人、「リーダーの器みたいなものを持っている選手に出会うが、無名の控え選手だったりする」。必ずしも役職に就いている者が優秀なリーダーであるわけではない。
「人前で話すことを苦手としていた私が、講演や解説を引き受けるようになったときに思ったこと」。これを機に、それまで以上に本を読んだり、試合を注意深く観察するようになった。その積み重ねが、それまで縁もゆかりもなかったヤクルトの監督就任の依頼に…
人は、他人の評価で価値が決まるもの。自分自身を絶賛していては、真の価値を見失う。
新人の頃、ハワイキャンプで門限を破って遊んでいた先輩が、監督からひんしゅくを買ったのを機に、野村が一軍での出場機会を得られるようになったことから。
「自己限定」した自分を、周囲に認めさせる。そんな風潮は許せない。
人は自己愛につい傾いてしまうもの。だが「自己愛に基づいた自分の評価よりも、他人が下したそれの方が正しい」。この厳しさと客観性こそ求められる。「“自分はまだやれる”と考えていても、人はそう思っていない」。45歳で現役引退を決断したときに実感した…
自分だけが得をする、目立つ、いい思いをするなど、自分勝手な行動を個性とは呼ばない。個性は周りの人の承認と納得があって輝くもの。
1989年のシーズン後、相馬和夫球団社長からヤクルト監督をオファーされたときに実感した。
「だからこそ、素直さや謙虚さが求められる」。
野村の人生訓。現役引退後、解説や講演の依頼が殺到。ところが、元来口べたな野村は自信を失いかけた。尊敬する評論家・草柳大蔵に相談し、「いい評論、いい解説をしていれば必ず誰かが見て、評価してくれる。だから絶対に手を抜いてはいけません」と諭され…
野村の人生訓。講演のときにいつも話すこと。野村が「人生の師」と仰ぐ評論家・草柳大蔵からアドバイスされた。