勝負の鉄則
全力投球で真っ向勝負することだけがプロの勝負ではない。「全知全能を使ってこそ、プロの戦い。ボール球の効用を理解してこそ、名バッテリーと言える」。
戦力が不足しているなら、点をやらないこと。守備に重点を置くこと。
「金田正一、江夏豊、私が受けた杉浦忠、稲尾和久には、打者に向かっていく闘争心があった」。
データを大切にする野村だが、データや情報を鵜呑みにはしない。分析や評価を通じて、“知識”に変えている。
南海時代、苦手にしていた稲尾和久の投球を16ミリカメラで撮影してクセを発見。対戦打率を3割近くまで上げた。だが、南海の同僚でエースの杉浦忠にその話をしたところ、稲尾に伝わってしまい、稲尾はクセを修正してしまった。せっかくのデータ収集、エース攻…
打者に向かっていく闘争心がないと、投手は大成できない。捕手は、目配り、気配り、思いやりと危機管理のマイナス思考。
強いチームはこれができる。
「考えるスポーツである野球において、感じなければ、話にならん。成長しない」。
感情に走ると、勝利はこぼれ落ちる。
闘志、やる気があるからこそ、人は大きな目標に向かえる。
勝つと同じパンツをずっとはいた。スポーツ選手をはじめ勝負に生きる人間は、ゲンをかつぐ。球場に来た記者にも「オマエが来ると負ける」とボヤくこともあった。
絞ると捨てる。捨てる勇気を持つことが大事。
引くことも、守って攻めることのひとつ。「専守防御が基本戦略。守って攻める」。点を取られなければ負けない。だからこそ守りは重要。
データを取る側、受ける側の考え方ひとつである。
野村は「感性」の力を信じている。それを磨くためにあらゆる本を読み、さまざまな人の話を聴きに行く。
相手の心理、味方の心理、どちらも重要。
ラッキーで勝利を拾うことはあるが、どんな敗戦にも必ず敗因がある。不運だけによる敗戦はない。それを厳しく自己分析することが、次の勝利を導くための第一歩。勝因ではなく、敗因を徹底的に分析する。
「得意の時、すなわち失意の悲しみを生ず」。勝って得意になったときには、すでに負ける要素が忍び込んでいる、という意味。野村は中国の古典を好み、『菜根譚』の言葉を頻繁に使う。
無策のまま猪突猛進するのは、単なる投げやりである。
「やけくそは無策。開き直りは、やることはやったから“人事を尽くして天命を待つ”こと」。
勝負とは、セオリーに基づきながら奇策をどう組み込むかである。
チームが強いと、チーム愛は自然と育つ。勝つことで結束が強まる。
勝利に対する野村の考え。イギリスのことわざにも「ダービーは常に強い馬が勝つ。だが、いちばん強い馬が勝つとは限らない」というものがある。
危機管理をモットーとする捕手出身の監督の思考。安心には慢心が潜んでいる。
勝負に挑むために必要なこと。
分業制が進んだ野球界で必要なこと。そのためには、よく観察することから始まる。監督は選手の意見を聞く力、選手を見る目が問われる。よい状態は何球までか? スタミナは? 性格は? けん制やクイック投法、一番優れた球種などを見極める。
それだけに継投がうまくいって勝つと嬉しい。「“どうだ。今日のヒーローはオレやな”と胸を張りたいほど」。
選手が動きやすい指示を出せるかどうかで決まる。「指示はいかに、簡素化するかが大事」。